1999年 京セラ㈱代表取締役社長
2005年 同社代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)
2006年 同社取締役相談役
2014年 ㈱ユーシン精機社外取締役 (現任)
2020年 山田コンサルティンググループ㈱取締役会長 (現任)
2000年 丸三証券㈱投資情報部長
2004年 同社引受部長
2016年 ㈱ラックランド取締役(監査等委員) (現任)
2018年 ㈱ユーシン精機社外取締役 (現任)
2019年 ㈱マンダム社外取締役 (現任)
小谷:ユーシン精機は創業以来一貫して工場内の自動化、特にプラスチック成形機から製品を取り出すためのロボットに特化して事業を展開してきました。その途上において取引先企業から「こういったものを作れないか」といったリクエストを頂き、それが新たな技術の蓄積、および事業の蓄積となってきました。足元では新型コロナの感染拡大という事態が起こり、当社にも大きな影響があるのは否めないですが、今まで培った技術を利用して、新型コロナウィルスと共存する新しい時代に合った商品を提供してより多くのお客様に満足いただける機会でもあると感じています。もともと当社は自動化を得意としており、工場内の人員を減らすニーズとは親和性があると思います。
西口:まさにその通りです。会社は常に新規の事業を立ち上げてそれを新たな収益の柱にしようとするものですが、その道は平坦ではなく、多くの事業が頓挫します。しかし今の主力事業も、創業期には新規事業でした。その時のことを思い出しながら、企業規模が大きくなった今は、社長が先頭に立って新規事業の責任者に寄り添ってサポートして行かなければなりません。
小谷:1年ほど前から、社内の改善事項を具体化し、同時に次の事業を立ち上げるという幹部を中心とした会議を行っているのですが、その中で、従来品ですが、熱心に市場開拓をしてこなかった商品があり、それをどのように売って行こうかということになりました。これは「PAシリーズ」と言うものですが、段ボールやケースごと、パレットに積んだり降ろしたりができるロボットで、シンプルな動きなので場所もとらず、取り扱いも容易というものです。コンマ何秒で取り出すという技術ではありませんが、荷物の積み下ろしを、人手をかけずに工場や倉庫で行いたいという、まさに今のニーズに合致しております。この商品で業界の異なる新たなお客様を獲得することができるのではないかと期待しております。
西口:今仰った商品は手離れがよさそうで有望ですね。人力で積み下ろしをする場面ではニーズは多いと思います。これは前からあった商品とのことですが、なぜ今新たに取り組もうと思ったのか、この発想が大事です。当社は今、社内外から明確な成長戦略を求められていると感じます。企業規模を次のステージに持って行くためには既存の主力商品を伸ばすだけではなく、新たな柱が必要です。新たな柱とするには、明確な目標を立て、どうしたらそれが達成できるのかを考え抜くことが大切です。目標実現の意識を強く持ち、そのための組織を強化すべきです。
中山:アナリスト経験から申しますと、当社はIRが地味ではないでしょうか。上場後数年は、ニッチトップの高成長ベンチャーというイメージがあったので何もしなくても相応の評価をいただいておりましたが、今は業績面では安定期に入った感があります。また今の投資家が会社に求めるものは多様化複雑化しており、分かりやすく伝えることが重要ですね。まず何よりも先に、「いつまでに何をどのようにする」という明確な目標を定めて、数値に落とし込み、それを外に向かってきちんと説明することが必要です。そこに実際に業績がついていけば、株式市場での評価は変わってくるはずです。最近では、単に売上や利益を伸ばせばいいのではなく、株主目線でのキャッシュフローや資本コストなども企業経営の目標として重視されており、さらには社会における存在意義、ステークホルダーに対する意識、環境への配慮など様々なことが要求されるようになりました。また株主目線だけでなく、これからの若い人たちは知名度や給与だけではなく、社会貢献度でも会社を見るようになるでしょう。それらすべてをトータルに説明していかなければなりません。当社は、全ての社員の働きやすさ、会社や工場の環境整備には力を入れていますよね。
小谷:はい、当社では当然と考えているような制度でも、他社から見ると恵まれていることがたくさんあるようです。出産・育児のための休業や時短勤務も取りやすく、男性も育児休業や時短勤務をすることは珍しくありません。また本社工場内においては、事務所や工場だけでなく、食堂や洗面所も居住性に配慮しています。緊急事態宣言下では新型コロナウィルスの感染防止のために社員は可能な限り在宅勤務をしておりました。
中山:社外取締役の一員として、その役割は、投資家目線に立って会社のガバナンスをより強固なものにし、企業価値を高めるための助言をすることであると考えています。今回指名報酬委員会を新たに立ち上げました。これを機会に、取締役がその責任を一層自覚し、目標達成のインセンティブを持てるような報酬制度にしたいと思います。また、将来の幹部候補者にもそのような意識を早くから持ってほしいと思います。上場会社の取締役もその他の幹部社員も、年度予算を立ててそれを実行していくことに集中しがちですが、それだけでは企業価値は上がりません。中長期的な視点に立って、「この会社をどうしたいのか、そのためには何をしなければならないのか」についての意識を強く持つべきです。
西口:今は創業メンバーである社長が会社を引っ張っていっていますが、いずれは創業の努力や苦労を知らない役職員が会社を引っ張ることになります。幸い、当社はキャッシュには余裕がありますから、新しい発想でゼロから新規事業を立ち上げるというチャレンジをしたい役職員に投資をする気概を持ってほしいです。結局新規事業を立ち上げるのは「人」なのですから、今は創造性をもった役職員を育てる絶好のチャンスです。